パーキンソン病とは

パーキンソン病は、手足がふるえる・筋肉が硬くなる・歩きにくいなどの症状をきたす進行性の病気です。有病率は約1000人に1人といわれ、原因のわからない進行性の神経障害を示す病気の中では、アルツハイマー病に次いで2番目に多いといわれています。50~60歳代で発症することが多く、ゆっくりと進行し、最終的に寝たきりになってしまうことがあります。しかし、現在では様々な治療法があり、症状の軽減を図ることができます。

DBS図体ふるえ
Medtronic社作成のパンフレット
「脳深部刺激療法について」のイラストを使用

原因

脳の黒質という部分の神経細胞は「ドパミン」という神経伝達物質を作っています。このドパミンは体を動かす機能を調節する働きをしています。パーキンソン病は、黒質の異常でドパミンの産生が減少することが原因で起こります。ドパミンが減少すると運動の情報がうまく伝わらなくなります。そのため、脳の出す運動の指令が筋肉にうまく伝わらず、なめらかな動作ができなくなってしまいます。

症状

パーキンソン病の主な症状は以下のとおりです。

  • 手足がふるえる(静止時振戦)
  • 筋肉がこわばる(筋強剛)
  • 動きが遅い(無動)
  • バランスがとりづらい(姿勢反射障害)

これらの症状がすべて同時に現れるわけではなく、患者さんの状態や病気の程度によって変わります。

治療法

薬物療法

まずは内服薬での治療が行われます。パーキンソン病には多くの治療薬があります。それぞれに特徴があり、患者さんの症状や年齢などに応じて処方されます。ドパミンを補う薬や作用を高める薬などがあります。

手術療法

症状が徐々に進行することにより、薬物療法では症状のコントロールが難しくなります。その際に行われる治療法に脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation; DBS)があります。これによりパーキンソン病の症状を軽減させることができます。ただし、脳深部刺激療法は、これらの症状を軽減するための治療で、病気そのものを治すものではありません。
当院では、内服治療は神経内科で、手術治療は脳神経外科で行っております。

手術の時期

手術療法は、さまざまな薬を組み合わせて内服調整を行っても運動症状(歩行障害、ふるえなど)が残存し、日常生活に支障を感じるようになった時と考えております。

手術のタイミング

手術のタイミングについて下記にご説明します。パーキンソン病は前述の通り進行性の病気で、内服治療を行っていても、症状は徐々に進行していきます。手術をしても症状は再び徐々に進行していきますが、手術をすることで症状を軽減させ、数年前の状態に戻すことができます。

経過のイメージ

経過var2

比較的早期に手術を行った場合

日常生活に支障がなく、仕事を続けたり、余暇を楽しんだりする時期が再度得られます

早期

症状が進行してから手術を行った場合

日常生活に支障がない時期が再び得られますが、その期間は短くなります。

晩期

症状がさらに進行してから手術を行った場合

手術を行って症状が軽減しても日常生活に支障が生じたままとなります

超晩期

このように症状が高度に進行してから(例えば、車椅子生活や寝たきりの状態で)手術を行っても手術の恩恵を十分に得ることができません。手術は決して最後の手段ではありません。人生を無駄にしないためにも日常生活に支障を感じるようになってから比較的早期に手術を行うのがよいと考えております。また、ご高齢になればなるほど、手術の合併症のリスクが高くなります。

手術適応条件

  • L-ドパという薬で症状改善効果がみられる
  • 十分な薬物治療がされている
  • 調子がよい(on))時に何とか歩行が可能
  • 年齢は少なくとも75(できれば70)歳まで
  • 著しい精神症状がない
  • 軽度の認知症があっても、問題行動がない
  • 日常生活に困難を感じ、本人・家族が手術を希望している