腰椎椎間板ヘルニア

sato_blog

椎間板ヘルニアの症状

椎間板ヘルニアの特徴は、急に起こる腰痛であり、物を取ろうと腰を屈めた時などに起こりやすい。これはぎっくり腰と呼ばれる腰痛ですが、通常は1〜2週間で直ります。しかし、ぎっくり腰は繰り返すことが多く、そのうちに臀部から大腿後部や外側部に及ぶ激痛に変わることがあります。これは坐骨神経痛と呼ばれるものです。椎間板ヘルニアが進行し、腰の神経に影響を与えたことを示す症状です。この坐骨神経痛も1〜3ヵ月くらいで直ることがあります。しかし、直らずに長期化する中で、次第に下肢のしびれや感覚障害、筋力の低下、冷感(異常に冷たく感じる)、むくみ、筋肉のこわばりやけいれんなどといった神経の障害を示す症状が発現し、患者さんを悩まし続けることもあります。こうなると、患者さんの生活は苦痛と不自由に満ちたものになります。種々の治療にも関わらず、症状が良くならず、むしろ悪化する場合には手術治療が必要です。

椎間板ヘルニアの症状01椎間板ヘルニアの症状02

椎間板ヘルニアの診断

ヘルニアを治療する上で重要なのは、どんなタイプのヘルニアがどこで何番目の腰神経を圧迫しているかを正確に診断することです。MRIはヘルニアを画像上に直接写し出せるので、どんなタイプのヘルニアがどこにあるのかを診断するのに最も適します。しかし、MRIで発見されたヘルニアが患者さんの症状の原因であるかを知るためには神経機能検査が必要です。これは、診察によって腰椎の何番目の神経機能が障害されているかを調べる検査です。こうして得られたMRI画像所見と神経機能検査の結果が一致したヘルニアが、症状の原因と診断されます。多くの患者さんでは、このような方法で椎間板ヘルニアは困難なく診断できますが、例外もあります。例えば、ヘルニアが腰椎の複数の場所に発見され、症状の原因であるヘルニアの特定が困難な場合や、加齢によって椎間板や骨、靱帯、関節などの変性変形が進んだための変形性腰椎症や脊柱管狭窄症などヘルニア以外の病変が合併している場合、あるいはヘルニアが通常発生する部位とは異なり、診断自体が困難な場合などです。従って、椎間板ヘルニアの正確な診断には、医師がMRI画像の読影と神経機能の評価に精通していることが必要です。

脊柱側面

超外側型椎間板ヘルニア

腰椎3番と4番の間で、右側の超外側部に椎間板ヘルニアを認める。

超外側型椎間板ヘルニア

 

後外側型椎間板ヘルニア

腰椎4番と5番の間で、右側に椎間板ヘルニアを認める。

後外側型椎間板ヘルニア

中心型椎間板ヘルニア

腰椎4番と5番の間で、中心部に椎間板ヘルニアを認める。

中心型椎間板ヘルニア

 

手術治療の必要な椎間板ヘルニア

ヘルニアによる症状の多くは、時間の経過と共に改善しますので、例外を除けば、急いで手術が必要というわけではありません。薬物治療や神経ブロックなどで痛みのつらい時期を乗り切れば、多くは自然に治癒が訪れます。自然治癒が期待できるのは、当院の症例ではヘルニア発症後およそ3ヵ月以内に症状の改善が進む場合です。問題なのは、一向に症状の改善が進まない場合です。このような場合には良くならない理由が必ずありますので、専門医の診察が必要です。手術治療の時期について、当院では次のように考えています。ヘルニア発症後3〜6ヵ月経過しても生活に支障となる痛みやしびれ、坐位や歩行障害が続いている患者さんでは手術治療が必要です。ただし、3ヵ月以内でも下肢の筋力低下が進む場合や排尿・排便機能障害が表れた場合には早急な手術治療が必要となります。さらに、ヘルニアに対する手術治療で留意すべき点は、神経機能障害が後遺症として残らない時期に手術が適切に行われるべきということです。

椎間板ヘルニアに対する手術治療

手術治療で代表的なものは、ラブ法と呼ばれる手術法です。この方法では、5㎝位の皮膚切開を加え、もともと存在する骨の隙間を利用して肉眼下にヘルニアを摘出しますが、神経を障害する危険性が低いわけではありません。近年は、3㎝位の切開で筋肉を剥離して、手術顕微鏡下により安全にヘルニアを摘出する方法が普及しています。当院では、手術顕微鏡と直径1.6㎝の筒状の開創器を用いてヘルニアを摘出するMD法を行っています。筒を入れるための皮膚切開は1.5㎝と小さくまた、筋肉の剥離は行わないので、術後の痛みが極めて少ないことが特徴です。出血量も10ml(cc)ですみます。術後は翌日から歩行が開始でき、1〜2週間で退院できます。術後の痛み止めは8割の患者さんで不要です。また退院後の通院治療も通常は必要ありません。当院では、このようなMD手術を800人以上の椎間板ヘルニアの患者さんで行ってきましたが、95%の患者さんで症状の改善がみられます。術後に症状の悪化が起こり、それが後遺症として残った患者さんはいらっしゃいません。MD手術は全国的にはまだ普及していませんが、多くの患者さんがMD手術を希望していることから、それに対応できる外科医の増えることが期待されます。

椎間板ヘルニアに対する手術治療01 椎間板ヘルニアに対する手術治療02

椎間板ヘルニアの再発

手術で椎間板をできるだけ摘出しても、全てを摘出することはできないので、椎間板ヘルニアの再発は起こり得ます。当院がMD法で手術した患者さんの内、再発のため再手術が必要になった頻度は2.5%でした。
100人の内、2〜3人で再手術が必要になることになります。再発の時期に関しては、50%が初回手術後6ヵ月以内であり、その内50%は術後3ヵ月以内に起こっています。このように椎間板ヘルニアの再発は術後比較的早い時期に起こる傾向があることを知って、患者さんは術後の注意が必要です。
従来、再発ヘルニアに対する手術治療は困難でしたが、当院ではMD法によって全ての再発ヘルニアの手術を行っています。初回手術を当院が行った再発患者23例と初回手術が他院で行われた再発患者28例の合計51例の内、92%で良好な症状の改善が得られ、悪化した患者さんはありません。当院では、再発椎間板ヘルニアに対する手術治療の安全性は確立されたと考えています。

手術効果の現れ方

ヘルニアによる症状は、腰神経がヘルニアで圧迫されているために起こる症状と圧迫され続けた結果、腰神経に障害が加わったための症状(これを神経根症と呼びます)から成り立っています。手術によってヘルニアが摘出されると、神経の圧迫によって起こっている症状は速やかに改善します。ヘルニアによる激痛が術後、嘘のように軽くなるのは神経の圧迫がとれた結果です。しかし、下肢のしびれや突っ張り感、冷感や筋力低下などは神経の障害が進んだことと関連していることが多いので、術後、速やかに消失するわけではなく、改善に時間を要します。一般的には、神経根の障害が軽く、その期間が短いほど術後の回復が早いといえます。

このページは以下に掲載された記事より抜粋して再掲したものです。
平成22年5月31日発行ふれあい第38号脊椎最前線より
平成22年8月31日発行ふれあい第39号脊椎最前線より
平成22年11月25日発行ふれあい第40号脊椎最前線より

PAGETOP