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■最新医療経営 No.244■

 一方、前述したように、大学・国公立等が病床の大部分を占有する金沢市にあって、民間病院の大多数は苦戦を強いられているが、こうしたなか1951年の本院開設以来、地域密着型の医療提供を実践しながら孤軍奮闘しているのが医療法人浅ノ川だ。機能の異なる5つの病院と1つの老人保健施設で合計2090床を金沢市内に擁する同法人の動向は、全国的にも注目されているが、なかでも金沢脳神経外科病院と金沢循環器病院という2つの専門病院の取り組みは特筆に値する。このうち、年間の手術件数が約340例以上、年間の救急車搬送件数が約600件に上る金沢脳神経外科病院は、治療の継続性や専門的なアフターケアの必要性に鑑み、県内290以上の病医院を登録医療機関として、患者紹介及び逆紹介を積極的に行っていることで知られている。同院の谷寛憲事務長は病診連携成功の鍵について、「院長のリーダーシップと医師をはじめとしたスタッフの意識改革」と断言するが、病診連携強化によって、同院の年間総収入額はこの3年間で約12%増加。全国でも数少ないMD法と呼ばれる低侵襲で「痛みの少ない」腰椎椎間板ヘルニア手術を行うなど、治療面でも常に患者本位の新しい試みにトライし続ける同院の動向には、地域住民や近隣の病医院から常に熱い眼差しが注がれている。         
  また、同じく循環器をメーンとした専門病院として、北陸地方で確固たる地位を築いているのが金沢循環器病院だ。石川県で唯一、北陸でも数少ない心臓病、血管疾患、高血圧などを専門とする同院は、大学病院や公立病院と異なった小回りのきく臨床一線病院として1年365日24間受け入れ体制を敷いており、特に狭心症、心筋梗塞などに対しては緊急カテーテル検査・治療から救命冠動脈バイパス手術まで、患者1人ひとりの状態に応じた適切な治療を行っている。
さらに、1991年の病院開設時に導入した北陸初のPETをはじめ最先端の機器を完備。金沢大学医学部附属病院をはじめとした北陸各地の急性期病院からの検査依頼で、 PETは毎日フル稼働している。昨年5月には、「金沢PET画像診断センター」を設立するなど、名村正伸院長のフレキシブルな発想のもと、独自の取り組みを次々にスタートさせる同院は、経営面でも良好な状況が続いているようだ。
  この両院のように、金沢市内の民間病院では、単科をメーンに据える専門病院に経営環境も良好なところが多い。しかし一方では、自院の特徴を明確化できない民間病院のなかには、新研修医制度施行によ医師不足を引き金に、経営の継続が困難になってきているところも散見される。その背景には、北陸3県の医師供給の総本山である金沢大学医学部の新卒医師が、東京・大阪をはじめとした大都市に流出したことを要因とした、いわゆる医師の引き上げ″が行われたこともあるが、前出の金沢医科大学付属病院の小泉晶一院長は、「確かに、従前と同様程度の人員を各地の民間病院へ派遣することは難しくなってきています。しかし大学も闇雲に派遣を取りやめているわけではありません。たとえば能登や輪島など、金沢から遠方に位置する医療機関への派遣はこれまでどおり最優先に行っています。むしろ、考え直さざるを得ないのは金沢市内や周辺の医療機関です。私は、大学以外の地域中核病院を充実し、その周囲のサテライト病院、診療所を整備するのが患者様にとって最もよい体制であると考えていますので、まずは地域の中核病院と連携できるような、専門性の高い医療機関を中心に医師の派遣を続けていきたいと考えています。一方で、地域ニーズに沿った独自の方向性を明確に打ち出せない医療機関には、今後は医師を派遣し続けることが難しくなるかも知れません」と、その方針を説明する。もう一つの医大、金沢医科大学は、もともと石川県以外の出身者が大部分を占めるため、金沢大学医学部による医師の引き上げを完全に補うまでには至っていない。
  地域における自院の役割や機能を明確化できなければ、派遣医師の確保もままならない民間病院。そのうちのいくつが今後も生き残っていけるか・・・。法人化で経営を活性化する高次医療機関の取り組みも含め、金沢市内の医療機関の動向には今後も注目していく必要がありそうだ。