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■Discussion■ ★リハビリを介した相互協力と患者本位の医療の実現 司会:近年、脳神経外科領域でもリハビリテーションを介した連携が構築されようとしています。脳神経外科領域の連携は今どのような状況にあり、今後どういった方向に向かっていくのか、また、これからの課題などについて、各先生方には急性期病院、リハビリテーション病院、開業医というそれぞれの立場からお話しいただきたいと思います。 佐藤:金沢脳神経外科病院は1980年に石川県野々市町という人口4万人の町に脳神経外科専門病院として250床で開院しました。当時は脳神経外科がどういう科なのか地域の人になかなか理解してもらえず、経営的には採算がとれない状況が5年くらい続きました。しかし、開業医の先生方からは脳神経外科専門ということ、地域にそのような病院がなかったことから、脳卒中関係、交通外傷といった患者さんの紹介を受けることができ、意識していたわけではなかったのですが、自然に周囲の診療所との連携がとれるようになっていました。 司会:次に米満先生お願いします。 米満:熊本機能病院は1981年に開院し、現在410床を有します。当時は整形外科と神経内科を標榜し、リハビリテーション科はまだありませんでしたが、救急からリハビリまでの一貫した治療体系を確立したいという考えは当初からありました。というのは、日本のリハビリテーション医療はいわゆる温泉に併設されたリハビリテーションセンターとしてスタートしたため、昭和40年代は一貫したリハビリテーション医療が構築されていませんでした。そのため、その後どんどん寝たきり老人を作ってしまった。ですから当院ではリハビリテーションを中心とした機能障害に取り組もうということで開院し、現在、回復期リハビリテーション病棟を2病棟100床持っています。経営的に見ますと、リハビリに関しては最初は採算がとれませんでした。しかし、これは絶対に必要なものだと考え進めていきましたら、1986年にリハビリテーションセンターを作った時に診療報酬でリハビリの点数が上がり、ようやく採算がとれるようになりました。 司会:それでは中山先生お願いします。 中山:私の場合は個人の医院ですが、クリニックを開院する前は国立大阪病院で脳血管障害を専門に急性期からリハビリまでをやっていました。しかし、急性期病院では急性期が過ぎるとすぐに患者さんを退院させてしまうこと、また、ちょうど病院が外来のリハビリを減らすという方針をとっていたため、退院後患者さんが十分にリハビリを受ける場所がなかったことから、自分でリハビリのできるクリニックを作ろうと一般内科と作業療法を通院と訪問で行うクリニックを開院したわけです。 ●ベッドコントロール:入院患者のベッドを確保するために、患者の病状や空床の状況、入退院の予定状況などに応じて、病院のベッドを管理・調整すること。予定外の入院や退院予定日の延期などといった問題も多く、特に入退院のサイクルが早い急性期病院では労の多い業務となる。一般的には病棟の看護師長が担当するケースが多い。
司会:一口に連携といっても、医療機関のおかれている状況によってその在り方は様々です。熊本市は急性期に特化した病院が多く、連携が進んでいることで有名ですが、熊本機能病院ではどうでしょうか。 米満:当院は連携でも特に脳卒中における連携に取り組んでおり、金沢脳神経外科病院のような救急をやっておられる急性期病院と連携して脳卒中患者を受け入れています。ですから、回復期リハ病棟の入院患者は約70%が脳卒中で、残りの30%が整形患者となっています。 司会:各病院から送られてくる患者さんの状態はやはり違うのですか?この病院は早期に送られてくるが、別の病院からはちょっと遅いとか。 米満:それはありますね。早いところでは10日で送ってこられますが、中には2カ月以上経っていて、これは少し遅いのではないかと思うこともあります。 司会:平均だと何日くらいですか。 米満:だいたい3週間か1カ月くらいになると思いますが、だんだん短くはなってきています。 司会:患者さんを送る側の急性期病院として、佐藤先生はどうですか。 佐藤:当院は地域で受け皿となる病院が少ないという問題もあり、他の病院へ送るのではなくて自院の療養病棟でリハビリをしています。私のところも急性期病棟から療養病棟に移す時はだいたい2週間から3週間くらいですね 米満:回復期リハ病棟がないところでも療養病棟で充実したリハビリをされているところがありますよね。「回復期リハビリテーション」という言葉にこだわらなくても、状況に応じたメリハリのきいたリハビリができれば良いと思います。その中で回復期リハビリテーションは確立した立場と言えます。 司会:回復期リハ病棟は今注目を浴びている病棟で、各地域でぞくぞくと作られていますよね。 中山:大阪では地域リハビリテーション推進事業がここ2年くらい前にはじまりまして、2次医療圏ごとに中心になる病院を置いていますが、たいてい回復期リハ病棟を持っている病院が中核病院になって推進されています。 米満:リハビリテーション広域支援センターですね。 中山:そうです。大阪市内はまだその中核病院が決まっていないのですが、ほとんどの地域は決まっています。 司会:金沢ではどうですか。リハビリを熱心にされている医療機関は増えてきているのでしょうか。 佐藤:まだまだだと思います。多くの急性期病院は平均在院日数にこだわっていますから、リハビリなどをどこまで責任をもってやっておられるか私には見えないですね。急性期から回復期、そこから在宅というつながりが、まだシステムとしてきちんとできていないという受け止め方をしています。急性期病院は急性期だけで、「次のことは他の施設に考えてもらえばよい」という割り切りがまだあるものですから、医療機関と医療機関の間でなかなかスムーズに動けないという状況が現実問題としてあります。 司会:逆に地域での受け手となる中山先生はどうですか。 中山:急性期病院から直接在宅に帰られた患者さんへの対応が一番悪いように思います。急性期病院は退院後にようやくかかりつけ医に情報提供してくれますが、退院前にリハビリの手配をするとか、ケアマネージャーと入院中からコンタクトをとって在宅の準備をしてから退院させるということはほとんど行われていません。欧米では、"early supported discharge"といって、早期から支援された退院が試みられていますが、日本の場合は"early unsupported discharge"なんですね。まったく支援しないで放り出す急性期病院が多いのです。 米満:もう一つの大きな問題は、急性期から回復期は医療保険の中で行われますが、いわゆる維持期に移る時には介護保険に変わります。そうしますと、医師は医療保険に関する知識はありますが、介護保険に関する知識が少ない。ですから手続だけでもたついて1カ月、2カ月はあっという間に過ぎていき、流れが止まってしまう。そうなると地域リハビリテーションにつがっていくところで足踏みしてしまうのです。私は"リハビリテーション医療"という言葉を使っていますが、リハビリ医療は治療としてのリハビリテーションと介護の中のリハビリテーションをうまく使い分けていかなければいけないと思っています。 中山:それに関して言いますと、先程のearly supported dischargeして在宅でリハビリを行うということを介護保険に委ねるのは無理があると思うのです。なぜなら、介護保険は「維持期の患者さんが機能低下を起こさない」という観点から作られていますので、例えば退院直後から集中的にリハビリをするというように、退院日から対応することは想定していないわけです。実際、要介護認定を申請して0.Kが出るのに2カ月くらいかかりますから、その間の空白期間はまったく対応できません。だからむしろ医療保険で退院直後をちゃんとカバーして在宅につなげるシステムを作って、その後、介護保険に引き継ぐというようにしなければスムーズな流れはできないと思います。
●回復期リハ病棟の入院患者:回復期リハビリテーション病棟の入院患者は、対象が限定されている。具体的には、@脳血管疾患、脊髄損傷等の発症後3力月以内の状態、A大腿骨頸部、下肢または骨盤等の骨折の発症後3力月以内の状態、B外科手術または肺炎等の治療時の安静により生じた廃用症候群を有しており、手術後または発症後3カ月以内の状態、C前記に準ずる状態であり、これらの患者を8割以上入院させている必要がある(「特定入院料はやわかりマニュアル」13頁参照)。 佐藤:確かに、つなぎ目がなかなかうまくいかないというのがいろいろな場面で出てきますね。2002年の診療報酬改定で医療保険の療養病棟に6カ月超の特定療養費化が導入されましたが、当院は特殊疾患療養病棟を持っていますよね。そうするとにわかに"期限切れ"という患者さんをお願いされることがあるのです。このように、まだまだ、場当たり的な対応が多いのが現状です。そういった点では米満先生のような施設完結型は良いのではないですか。 米満:最初は、施設内でやろうという考えはなかったのです。地域が対応できないので、仕方なく施設完結型になりましたが、理想はやはり地域完結型だと思います。ただ、患者さんにとっては医師の顔も知らない施設に転院させられるよりは、同じ施設内で治療を受け続け方が安心できますから、そういった点では施設完結型は良いと思います。 司会:すべてが施設完結型でいけるかと言えばそれは無理ですし、地域完結型では各施設の考え方などに温度差があり、連携に対する取組み方も違いますからね。 中山:私は国立大阪病院に勤務していた頃、当時の厚生省の留学生として2年間デンマークに行っていたことがあるのですが、当時いたコペンハーゲンの病院では、発症からリハビリ終了までずっと同じ施設で診ていました。それは確かに患者さんにとって非常に良いと思います。ただ、患者さんは1カ月以上入院しますから日本に置きかえて経営の観点からみると、これでいけるのかなという思いもありました。 米満:その点については、診療報酬で、回復期リハの点数や特殊疾患療養病棟の点数など機能に特化した点数が設定されてきましたのでやりやすくなりました。私のところは一般病床250床、回復期リハ病棟100床、療養病床60床ありますが、このように機能分化した状態で流れを組み合わせていくと、経営的には成り立つと思っています。 佐藤:私は医療情報がきちんと開示され、患者さんに選択権があるのであれば、施設完結型でも地域完結型でも良いと思います。というのは、私どもの地域で、当院から介護保険施設に移ろうとしたときにどれくらい待たなければいけないのかを調べさせたら、6カ月から1年も待たなければいけなかったのです。この場合、特殊疾患療養病棟で対応していますが、やはりこのような実状は大きな問題だと思いますね。 司会:米満先生のところの老健施設では待機患者さんはどれくらいなのでしょうか。 米満:老健は中間施設という理念を徹底して追求していますから、在所日数は2カ月を切っています。日本で3番か4番目に早いんですよ。その代わりに入所した時点で退所後の在宅療養の準備を進めます。でないと間に合いません。在宅につなげる場合には、当院が訪問リハや通所リハの受け皿となります。それがないと老健の入所期間がどこでも長期化して、そのために待機患者さんが全然入れなくなります。 中山:あとリハビリに関して言えば、老健の施設基準は、PT(理学療法士)、OT(作業療法士)が100人当たり1人になっています。私はこれで果たして在宅復帰をめざした十分なリハビリができるのかと思っています。米満先生のところではもっと強化されているのですか? 米満:はい。80床に対して、PT6人、OT4人の計10人おります。そのおかげで2003年の介護報酬改定で通所リハに個別リハ加算が新設されたとき、すぐに算定できました。個別リハがやれたので、介護報酬の点数が引き下げられてもマイナスにはなりませんでした。個別リハをやっていないところはマイナスです。老健でも病院でもそうですが、何をやるべきかを常に考えて、自分たちがやりたいことをきちんと理念に燃えてやっていれば、あとから厚労省はついてくると思います。 佐藤:私もまったく同感です。実は今の特殊疾患療養病棟は、その前は介護保険病棟だったのです。しかし、病院が介護保険の病棟をやっていくべきなのだろうかと疑問に思い、特殊疾患療養病棟に変えたのです。その矢先に介護報酬改定があって点数が下がったものですから、影響をほとんど受けなくて済みました。ですから地域において自院がどんな役割を求められているのか、医療全体の中でそこを見続けていければ経営的にも成り立つと思います。
●6カ月超の特定療養費化:2002年度診療報酬改定で導入された「180日を超える入院料の特定療養費化」を指す。入院期間が180日を超えると入院基本料等の保険給付が最大15%カットされ、その分の費用を患者が自己負担するというもの。長期入院の抑制と介護保険への誘導を企図した措置とされている(「診療報酬はやわかりマニュアル」34頁参照)。 司会:連携という点では、地域のかかりつけ医と病院の関係性が非常に重要になります。金沢脳神経外科病院では現在290人の登録医がいらっしゃるということですが、かかりつけ医の先生方との機能分化はどのようにされているのですか。 佐藤:当院の役割はあくまで急性期で、あとは地域との連携で自分達の役割を果たしていくという考え方でやっています。ですから急性期が過ぎた患者さんや外来患者さんはどんどん逆紹介を行っています。脳卒中の患者さんというのは高血圧や糖尿病といった生活習慣病も持っておられます。そういった疾患の専門家は開業医の先生ですから、基礎疾患は開業医の先生にきちんと診ていただいて、当院は半年に1回くらい「そろそろ定期検査をしましょう」と患者さんとかかりつけ医にダイレクトメールを送って、専門的なフォローアップをしています。私は在宅医療の主役は開業医の先生だと思うのです。ですから、在宅の患者さんは地元の開業医の先生にお願いし、しかしその後、例えば肺炎などで入院が必要だということになれば、必ずしも脳外科の領域でなくても受け入れています。 司会:かかりつけ医として、中山先生のお考えはいかがでしょうか。 中山:開業してわかったのですが、かかりつけ医にしかない患者さんとの人間関係があるんです。かかりつけ医は患者さんや家族から何でも相談を受け、長い時間をかけて信頼関係ができてきます。だからこれを有効に利用しないといけないと思うのです。そのためには、連携におけるかかりつけ医、家庭医の役割の見直しが必要だと思います。 米満:しかし病院側から言いますと、そういうかかりつけ医が非常に少ない。日本は家庭医、かかりつけ医という言葉はありますが、本当の意味で位置付けされていない。ただ開業した人をかかりつけ医というかといえばそうではありません。かかりつけ医の位置付けがなされていかないのです。中山先生がおっしゃるとおり、かかりつけ医の役割は非常に重要です。 佐藤:私も同感です。今の開業医の先生はサラリーマン化してしまって、午後5時以降はまったく連絡がとれないということも多い。患者さんからみても病院にかかっている方が安心だという思いがあるようです。だから開業医の先生と連携していこうと逆紹介を進めても、不安が解消されなくて、結局戻ってくる患者さんがいらっしゃいます。 米満:開業医の先生に一番必要なのは、患者さんの生活までみるということだと思います。機能障害や病気の治療だけじゃなくて生活機能までとらえ、そして生活機能障害をどうするかというところまで関わっていくというのがかかりつけ医じゃないかと思います。 司会:生活までみるという点では、中山先生は、かかりつけ医として、訪問リハや往診なども積極的にやっておられますよね。 中山:そうですね。実際に患者さんの自宅に行きますと、患者さんの生活が見えてきます。どのようにトイレに行っているか、一日をどのようにして過ごしているかとか。ですから、そのような生活に応じた環境を整備して、訪問リハをやると不思議と成果が上がるんです。あと、在宅のリハビリで最も重要なのは教育指導だと思います。医師やPT、OTが24時間付きっきりでリハビリをすることは不可能ですし、1週間に1回30分を1時間に増やしても大差はありません。そうなると、患者さんに自分で訓練する方法を教え、御家族やヘルパーに訓練方法や介護方法を指導し、定期的に客観的評価をしてあげてモチベーションをつけていくことが在宅リハの柱になるのではないかと思っています。 司会:先程中山先生から開放型病床といお話がありましたが、中山先生は実際に開放型病床を利用して共同指導をされているのですか。 中山:はい、しています。開放型病床ですと、私が行ってカルテを見たり指示も出せるシステムなので非常に良いです。患者さんが入院したら病院まで行って、(病院側の)主治医と話をして治療方針を決めています。私から患者さんに説明しますし、患者さんから主治医に伝えてほしいと言われたことも伝えています。こういうシステムを導入していけば地域の開業医、登録医の意識も少しずつ変わっていくと思うのですが‥。 佐藤:開放型病床も非常にうまくいっているところと、そうでないところがあるようですね。 司会:開放型病院で例えば100人の登録医がいると、そのうち患者さんを頻繁に紹介するのは20人くらい。その中で病院をマメに訪問する開業医は3〜4人くらいというのが現状のようです。 米満:今はまだ条件が整っていないので、これから進めていくべきですね。それから開放型がいいと言われる開業医の先生が増えてくるということも重要です。 中山:ただ、時間の確保というのも問題です。大阪のような診療時間の形態をとらないと難しいかもしれませんね。
●登録医:開放型病院においては、その病院の属する二次医療圏の診療所医師や歯科医師が20名以上登録されていることが条件となる。一般的には、ここで登録されている医師のことを「登録医」と呼ぶが、開放型病院以外でも独自の運営規定などを設けて地域の開業医等を登録している病院もある。連携を進めるにあたっては、ポピュラーな手法の一つ。 司会:連携をしていく上で重要なのが情報提供や情報の共有化ということだと思うのですが、これについてはどうでしょうか。 佐藤:開業医の先生は脳血管障害の専門家ではありませんから、我々の持っている情報をできるだけわかりやすく伝えることが必要です。当院では紹介状に患者さんの解説付きの画像所見を付け、紹介先の医療機関が紹介状をそのままカルテに綴じられるようにして渡しています。これは開業医の先生から非常にわかりやすいと好評で、紹介状を見せながら患者さんに説明できると大変喜んでいただいています。これから連携が進んでいくと、情報をどのように提供し合うかが課題になってくるでしょうね。 中山:そこまでしてもらえれば開業医はありがたいですね。理想の形はやはり専門家は病院にいて3カ月か半年に一度診療し、通常は地域のかかりつけ医が診る。その間の検査結果やサマリー、経過を病院に行くときに持っていき、病院で検査などをした結果をまたかかりつけ医のところに持って帰ってもらう。そうなれば相互補完でき、患者さんにとって便利なシステムになるのではないかと思いますね。 米満:そうですね。連携には情報の共有化にしっかり力をいれかればいけません。もう一つ理想を言えば、何カ月か経ってから経過を紹介した医師に送ればもっと安心しますね。 佐藤:あと連携の際の情報提供という部分では、一番困るのが薬の問題ですね。開業医の先生は現在ジュネリックを多く扱っておられるのですが、当院は先発品を使っている場合があるので、紹介先で薬が変わるというだけで戻ってきてしまう患者さんがいます。ですから当院の薬局長に連携先の薬を全部把握するよう指示して、紹介元である当院から患者さんに薬が変わることを説明しています。そうすれば患者さんは非常に安心します。 司会:連携先でそのように薬が変わることは、よくあるのですか? 佐藤:ええ、変わりますね。 中山:当院は完全に院外処方なのですが、院外処方だとあまりジュネリッタは使いませんね。 佐藤:そのあたりは地域性もあって、石川県では医薬分業率が非常に低いのです。ですから、処方について患者さんの不安をなくすためには、紹介元が事前に説明してあげればいいと思います。紹介する限りはそこまで責任をもたなければいけないと思います。 司会:薬の話題が出ましたが、この他、薬に関して何か感じておられる点はありますか。 米満:これからの薬剤ということで言えば、やはりオーダーメイドですね。一人ひとりの体質にあった薬をどう提供するのかというのは非常に難しいのですが、薬剤師や製薬会社など薬を担当する人は、そのためにどのようなことが必要なのかを一番知っているべきです。機能分化の中でしっかりその役割を担ってほしいですね。それが医薬分業の大きな意味でもあるわけです。 中山:そうですね。特に薬剤師はプロフェッショナルとして地域医療における役割をもっと認識すべきだと思います。問題点の一つとして医薬分業が推進されている一方で、休日・祝日、夜間に営業していないというのはおかしい。救急診療所があるように救急薬局があるべきなんです。もう一つは訪問服薬指導ですが、患者さんの生活を見てその人の飲みやすい服薬状況を把握しながら医師の方にもフィードバックしてほしい。そして、さらに服薬の相互作用のチェックや過剰投与、副作用歴やアレルギー歴まで医師にフィードバックしてくれれば、地域のかかりつけ薬局が機能してくるのではないかと思います。 佐藤:薬剤師に限らず、それぞれの職種がこれから何をすべきか、そういう考えを持った専門職であってほしいですね。今までやってきたことをただやり続けるのではなく、新しいシステムの中で自分たちの役割はどう変わるのかということを考える視点を持ってほしいと思います。
●石川県では医薬分業率が非常に低い:日本薬剤師会の「処方せん受取状況の推計(2003年2月分、全保健)」によると、石川県の処方せん受取率は24.9%となっており、これは福井県(15.4%)、和歌山県(24.0%)に次ぐ全国3番目の低さ。
司会:薬剤に関わる職種として、MRにはどのような役割を担ってほしいと思いますか。また、連携が進む中でMRにはどのようなことを望まれているのでしょうか。 米満:昔はプロパーといって薬を売りに来ていたわけですが、MRは医薬品の情報提僕者であるはずです。一つひとつの薬の効果・問題点といった情報を正確に伝えてほしいですね。自分たちが薬を患者さんに提供するという真摯な考え方でメリット、デメリットをきちんと医師に情報提供していくべきです。逆に医師を啓蒙するぐらいの気持ちがほしいと思います。 佐藤:短い面談時間の中、一生懸命説明したいという気持ちはわかるのですが、こちらは疲れていて「勘弁してほしい」と思う状況もあります(笑)。ですから、短時間でワンポイントを説明する工夫が必要ではないでしょうか。その辺はコツをつかんでほしいですね。 中山:薬はこれから介護分野にも関連していきます。介護保険の意見書の中には薬の名前が出てきますし、訪問介護師やヘルパーも薬に関係します。その時に薬の情報をどうやって得るのかということになります。これからは、医療・保健・福祉が一体化していきますので、ホームページを通じで情報提僕するとか、福祉関係の人からの問い合わせにも対応するとか、そういった機能を持っておかないと、製薬会社の役割というのは果たせなくなるのではないかと思います。 佐藤:それから、例えば、脳梗塞と高血圧を持っている患者さんで、一時カルシウムブロッカーがたくさん使われたのですが、やはり脳梗塞の患者さんには下げすぎということで今はまた変わってきています。われわれはそうやって薬の使い分けをいろいろやるわけですが、実際にMRでそういうことを理解して薬の紹介に来る人は少ないですね。脳神経外科に薬の情報を提供しにきているのに、そういうことがあまりわかっていない。もっと勉強してほしいですね。自分たちが扱っている薬がどういう疾患に適用になって、どういう場合はどうなるのかということを添付文書の内容以外にも理解しておいてほしいと思います。これからガイドラインが出てきますと、薬剤はさらに絞られていきますよ。 中山:そうですね、客観的に他の薬との違いなども説明してほしいですね。全体の中での位置付けが大事だと思います。ラジカット一つを説明するにしても、急性期全体を把握した中でのその薬の位置付け、例えば世界的にはこういうトライアルが進んでいて将来的にはもっと良いものが出てくるかもしれないということを踏まえ、そういう情報も提供しつつ薬の紹介をしてもらえると、こちらとしても貴重な情報源になります。自分の専門分野はいいのです。私なら脳血管障害なら大抵チェックしていますから。しかし専門外の分野、例えば骨粗鬆症は私の専門ではないので精通していません。その辺の情報が入ってくると非常に役に立ちます。むしろ自分の専門外の分野の貴重な情報を流してほしいですね。 司会:そのためには、訪問先の先生がどんな専門でどんな患者さんを診ているのか把握している必要がありますよね。 中山:その通りです。専門領域や周辺領域が何かですね。 司会:医療が転換期に入り、大きく変わってきたのと同じように、MRの行動も変わっていかなければいけないということですね。今日は長時間にわたってありがとうございました。
●意見書:「かかりつけ医の意見書」を指す。介護保険制度では、要介護認定に際して主治医が傷病や心身状況、介護に関する意見などを記載した「意見書」を作成し、判断を下す際の参考資料とする。 |
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