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■メディカル・パートナリング■

専門病院の機能を活かした連携で地域からの信頼に応える
" 継続 "に責任を持つために
紹介外来と入院医療に専念することを銘記
少人数で語り合う「連携の会」
院内放送やDMで患者の理解を深める
救急隊員からの要望にも素早い対応
地域の医療ニーズに応えた「特殊疾患療養病棟」の設置

 2001年7月に地域連携室を立ち上げ、本格的に医療連携に取り組み始めたという金沢脳神経外科病院2年足らずで月平均の紹介患者数が倍近くになり、紹介率は16・5%(2000年度)から27・9%(2002年度)まで伸び、30%のラインも近日中に突破する見通しです。 
「一番大切なのは、患者さんを中心とした連携であることです」と話すのは佐藤秀次院長です。患者さんを主体において、医療機関同士が手をつながないと、患者さん、診療所、病院のすべてにメリットが生まれる連携にはならない、と語ります。

 金沢脳神経外科病院は1980年に県内初の脳神経外科専門病院として設立した当初から、質の高い専門医療と患者中心の医療を提供することを病院運営の基本としてきました。
  佐藤院長は「脳神経外科の患者さんは、急性期を過ぎた後にも、治療、維持、再発予防など長期間にわたる加療が必要です。それはとても我々だけの力では担い切れません。患者さんの治療の継続性を保つためには、医療連携は不可欠です」と連携の重要性を語ります。
  同院では、設立以来20数年間の医療活動の中で、専門性に対する周囲の理解も深まり、患者さんを紹介され、紹介するという自然な連携関係が作られており、患者さんが紹介状を携えて同院の外来を訪れることも少なくありませんでした。ただ、そこには強固な連携システムがあったわけではなく、医師同士のつきあいによる紹介がほとんどでした。このため、「何となく患者さんが来なくなったと思ったら、実は地域のクリニックヘ通っていたということも多かったように思います」と佐藤院長は打ち明けます。
  そこで「治療の継続性に責任を持つためにも、逆紹介をしっかり行うことが大切であり、そのために連携体制を構築していくべき」との考えから、2001年7月に地域連携室を発足させました。

 同院の連携体制強化の具体的取り組みは、2001年9月、連携協力医療機関登録制度を設け、登録医を募ることから始まりました。その際に県南部650の医療機関に出された案内には、同院が「紹介患者中心の外来医療と入院医療に専念すること」が銘記され、「患者さんにとって最も良い選択を優先することをコンセプトに、患者さんに満足していただける医療連携を実現していきたい」との旨が記されています。
その趣旨に賛同し、登録を申し出た医療機関は190。「思ったより多いという印象でした」と振り返るのは連携推進を担当する谷寛憲事務長です。「地域のかかりつけ医の先生方も、病院との連携を望んでいるのだという手ごたえを感じました」と話します。
その後、佐藤院長のリーダーシップのもと、連携強化が進められてきました。佐藤院長は連携を進めるためには「まずこちらから種をまかなければ、芽は出ない」と話します。つまり患者さんの紹介を促すよりも先に、こちらが積極的に逆紹介をしていくべきだというわけです。
佐藤院長は「当院を受診して専門医による診断がつき、あとは薬でコントロールできる患者さんは地域へと戻していく」と断言します。前述の連携協力医療機関登録制度の案内にも「特に当院に直接来院された患者さんで、当院としての治療方針が確定し、当院以外でも加療の継続が可能な患者さんについては、積極的に逆紹介を行っていく」と記されています。
そのために、県医師会が発行している県内約1000の医療機関のデータベースが、診察室のどの端末からも閲覧できるようになっており、医師が患者さんの希望を聞きながら、その場で患者さんと一緒に逆紹介先を決めることができるようになっています。
「逆紹介は、登録医だけに行うものではありません。あくまで患者さんの希望が第一です。ですから登録医だけが検索できるものではなく、県下すべての医療機関が閲覧できるデータベースを利用しています」と佐藤院長は語ります。


 そうした同院の連携の理念を連携先の医師に理解してもらうために、佐藤院長は各地区で「連携の会」を開催してきました。これは各地区の医師4〜5人ずつに集まってもらい、そこに出向き勉強会を行うとともに、連携の趣旨を語る会です。
「我々、病院側と診療所の先生方が連携に対して同じイメージを持っていないと、患者さんの利益となる連携は実現できません。それには直接顔を合わせて話をすることが不可欠です」(佐藤院長)
脳神経外科という専門領域について最新の治療方法を紹介することなどを通じて、同院の機能や治療方針、技術などをわかってもらうことも目的の一つです。
さらに佐藤院長は「やはり患者さんにしてみれば、違う病院へ行くのはとても不安なはずです。そのときに『あそこの先生はこんな人だから』という情報を伝えてあげられるだけで、患者さんの不安はかなりやわらぐ。逆に患者さんに『どんな先生ですか』と聞かれて、『いやあ、会ったことはないんです』では、患者さんは余計に不安になってしまう」と話します。医師同士がしっかり連携しあっていることを患者さんに示せることも、大切だというわけです。


 患者さんを主体とした連携体制を構築するためには、連携に対する患者側の理解も不可欠です。肝心の患者さんに理解がなければ「よい医療連携は築けない」と佐藤院長は強調します。
  例えば医療連携を進め、紹介状を持った患者さんの利便性を図ることによって、逆に紹介状を持たない外来患者は同院での受診が不便になることもあります。
「当院では外来患者数は減っていますが、検査やより専門的な診察が必要な患者さんが増えていることで、外来患者一人あたりの平均診察時間は長くなっています。紹介患者さんを優先的に診察するシステムとしているため、どうしても紹介状を持たない患者さんは待ち時間が長くなってしまい、『サービスの低下ではないか』と言われたこともありました」(佐藤院長) 
そんな誤解をなくすためにも、同院では院内掲示や広報誌、ホームページなどで積極的に医療連携についての啓蒙活動を行ってきました。今年5月から始まった院内放送も、その一環です。
同院では午前9時半と11時に「当院は、現在、石川県内約260の病院や診療所と医療ネットワークを組んでおります。現在、当院に通院中の患者様で、患者様が普段かかられている診療所のかかりつけ医での通院をご希望の方、あるいは当院の医療ネットワーク先での通院をご希望の方は、遠慮なく診察の際に医師にお申し出ください。ご希望の診療所にご紹介します」との放送が流れます。当初は外来部門のみでの放送でしたが、最近では病棟にも流すようにしたといいます。「というのも、退院間近な患者さんにぜひ知っておいてほしいと思ったからです」(佐藤院長)
放送では「ご紹介したあとも、脳神経外科専門病院としてMRIやCTなどの専門的な検査を、定期的に受けていただけるようになりますのでご安心ください」とのコメントも付け加えられています。
  この言葉は、逆紹介する際にすべての患者さんに伝えられますが、同院では逆紹介時に口頭で説明するだけではなく、同院への通院をやめたあとのフォローも行っています。
  その一つが昨年12月から開始したダイレクトメールです。これは、逆紹介した患者さんに定期検査の時期がせまっていることを伝えるもので、今年6月からは患者さんだけでなく、逆紹介した先のかかりつけ医にも送るようにしています。
患者さんによっては、同院で定期検査を受けることをかかりつけ医に伝えにくい場合があったり、連携システムそのものが理解されていない場合などもあり、紹介状を持たずに直接同院に定期検査を受けに来る患者さんも多かったそうです。このため、かかりつけ医にも「○○さんがもうすぐ定期検査の時期です」といった情報を提供し、患者さんに検査を勧めるとともに、紹介状を書いてもらうように配慮したというわけです。


 同院では救急隊員との連携にも力を入れてきましたが、最初に取り組んだのは勉強会を増やしたことです。以前は消防署の主催による同院との勉強会が年に1回開かれていましたが、昨年からは同院主催の症例検討会を年に3回行い、計4回の勉強会が行われるようになりました。
勉強会のあとには懇親会が開かれますが、その場では救急隊員から忌憚のない意見が寄せられ、それが改善につながったこともあります。
「例えば、当院の敷地と−般道との境の部分に7センチ程度の段差がありました。我々は気づかなかったのですが、脳外科領域の重症患者を搬送する救急隊員の皆さんにしてみれば、とても気になる段差だったのです」
そこで同院では、早速段差を除く工事を行いました。出された要望に対して、「できる限り素早く対応することが救急隊員の信頼にもつながります」と佐藤院長は話します。
また、以前は救急隊員から問い合わせがあった患者さんについてのみ、提出していた報告書も、搬送されてきたすべての患者さんのその後について、定期的に消防署に提出することにしています。
当直医と直接PHSで話ができるホットラインも、救急隊員からは好評です。救急隊員が病院に電話をしてきた際に、医師のPHSに転送し、直接、医師と話ができるようにしているのです。
佐藤院長は「すべては積み重ねです。連携は何か一つ、大きなシステムがあってうまくいくものではなく、小さなことの積み重ねによって信頼を深め合っていくことが大切だと思います」と話します。
今後は「さらに中身の充実した連携を目指したい」と語る佐藤院長。そのためにはより詳しい患者情報や診療情報を連携先に伝えたいと考えています。現在、佐藤院長は紹介患者のMRI画像などをデジタルカメラで撮影し、紹介元の医師に情報提供する試みを始めています。 
「脳神経外科という専門分野であるため、内科の先生方などにお話する際にはわかりやすい情報痩供でなければなりません」
また、同院では現在、回復期リハビリテーション病棟の新設を計画しています。同病棟が開設されれば、今度は他の急性期病院との連携強化も必要となってくるでしょう。地域の医療ニーズを満たすために、そして今以上に中身の濃い医療連携を行うために、次なる目標へと向う同院です。


 同院では220床のうち、106床を特殊疾患養病床としています。特殊疾患療養病棟は、主として長期にわたり療養が必要な重度の肢体不自由児(者)、脊椎損傷等の重度の障害者等の入院を目的とした病棟です。入院料は1と2に区分されており,1は1980点、2は1600点。180日超の入院患者に対する特定療養費の対象にはなりません。同院では入院患者の疾患内容などを鑑み、特殊疾患療養病棟入院料2を選択しています。
  もともと、同院ではこの106床を医療型の療養病床としていました。しかし同院の場合、脳血管障害による肢体不自由者や脊髄損傷、神経難病など、長期入院が必要となる患者さんが多く、療養病床入院患者の70%が6ヶ月を超える長期入院患者となってしまいました。このため、6ヶ月超患者の入院料に特定療養費が導入されたことは、同院のような患者構成の医療機関にとっては、深刻な問題でした。
  そんな状況下で、同院を管轄する地域の行政機関から、「地域の開業医が在宅でみている難病患者に対するショートステイの機能を、地域の専門病院として担って欲しい」との要請がありました。
  このような患者さんと地域のニーズ、そして病院の経営、それぞれを熟慮した結果、特殊疾患療養病棟を選択し、開設するに至りました。