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■医療タイムス No.1626■

脳神経外科の見据え、重度障害・難病患者受入れへ
協力医療機関の冊子発行、病診連携は患者の理解から
紹介率30%達成、平均在院日数は最短14日
救急隊専用メールを設置、情報交換・救急搬送促進に
ヘルニア摘出にMD法導入、専門外来充実しイメージUP
院内感染対策にICT結成、エビデンスある医療環境へ

同院は、金沢市から南西約10キロ、人口約4万2200人の石川郡野々市町にある。 県内に4つある医療圏では金沢市を含む「石川中央」に位置し、医療圏人口は約70万人規模と県内最大、病床の過密地域でもある。  病棟はこれまで一般病床60床、医療型療養病床54床、介護型療養病床54床、特殊疾患療養病床52床で運営してきたが、 今年5月、介護型療養病床を返上して特殊疾患療養病床106床に転換した。将来的には、 さらに残る療養病床を回復期リハビリテーションに転換する方針でいる。 難病・重度障害、またそのために長期療養を必要とする患者が多い脳神経外科という診療科の特性を見据えた病院運営に打って出た。 佐藤院長は「専門病院は、重度障害・難病患者のためにあるべき。 医療圏で求められている当院の役割そして地域住民が当院に求めているニーズに応えることが第一」と述べ、 地域医療との連携、ネットワークの構築、そして機能分化の必要性を指摘する。

01年7月、医療連携室を設置した。9月には本格稼動し、連携協力医療機関、紹介・逆紹介患者数、救急搬送患者に関する情報が全てパソコンで管理できるよう、 独自の地域連携システムを整備した。当初190件だった登録医療機関は、今年6月1日現在、260件まで拡大してきている。 佐藤院長は「在宅支援の主人公は診療所の医師。不特定多数の地域から患者さんが訪れる専門病院としては、患者さんに逆紹介を保障する必要がある。 多くの患者さんは手術・治療が終わると“病院から追い出される”という感覚や“専門的なケアが今後も継続的に受けられるのだろうか”といった不安に陥る。 従来、囲い込みとも言われた医療連携だが、専門的なフォローの確立は必要」と指摘する。  同院は、外来待合室に連携協力医療機関名を地域ごとに掲載した掲示板を掲げるだけでなく、 全30ページにわたる冊子『金沢脳神経外科病院と連携協力関係にある医療機関』を発行している。 各医療機関の住所、連絡先、診療科目はもちろん、それぞれの医療機関が寄稿した紹介文を併せて掲載するなど、 親しみやすい誌面づくりを心掛けている。冊子は外来待合室の病院パンフレットなどと一緒に置かれ、患者は自由に持ち帰ることができる。 「冊子は手に取ることができ、退院しても家の近くに診てもらえる医療機関があるということを実感しやすい。 患者さんの不安解消を図るだけでなく、患者さん自身に病診連携の意義を理解してもらうことが大切」と佐藤院長は話す。

この結果、紹介患者数は00年度延べ571人が01年度は790人、02年皮は1117人と1000人を超した。 逆紹介件数も00年度延べ637件が01年度は791件、02年度は821件と順調な伸びだ。 月平均の新患数は00年皮235人が01年皮は248人、02年度は328人と増え、 03年3月時点では対前年同月比54.3%、年度平均は対前年度比32.6%まで伸びてきている。 他方、一日平均外来患者数は00年度138人が01年度は134人、02年度は109人と減少してきており、 急性期病院としても理想的なかたちになりつつある(佐藤院長)。  紹介率30%・平均在院日数17日以内を目指して取り組んできた同院の「3017運動」は、 平均在院日数が00年度20.1日、01年度17.9日と短縮を続け、02年反型翌日で目標をクリア。 03年5月には最短14.0日を記録している。紹介率は03年2月に32.4%に達した。

救急車搬送件数は年間約500件、手術件数も年間約240件(02年度)に達してきている。 救急隊員との緊密な連携を図るため、PHSによる当直医との直通回線を開設したことが、 さらに救急搬入の増加につながっている。 救急隊員に対しては、 搬送・搬入過程で細心の注意を必要とする脳外科系の疾病に理解を深めてもらうため、 従来、消防署が主催で行っていた年1回の症例検討会に加え、 02年からは年3回にわたって病院主催の症例検討会を開催している。 病院ホームページには救急隊専用のメールコーナーを設置し、情報交換がしやすい環境を心掛けている。 谷寛憲事務長は「交流を深めるうちに、逆に隊員から “病院入口が道路から7センチ高いため搬入時に危険だ,と指摘され、 早速改善を図ったことがある」として、連携の重要性を指摘する。 救急救命士からの要請により設置した病院独自のバックボード(搬送固定用具)は、 脊髄損傷が疑われる受傷者の搬送に有効と隊員らから好評を得ている。

ヘルニア

予防医療の観点から今後は、脳卒中などの脳血管障害を防ぐ脳ドックをはじめ、脊椎疾患を柱とした専門外来に力を入れる方針だ。 同院は、従来、皮膚切開が約5センチ必要とした腰椎椎間板ヘルニア摘出術にMD法(Microscopic Discectomy)を導入、患者への侵襲性軽減と医療費のコストダウンをねらう。MD法を導入する医療機関は全国でも20カ所余と少なく、県内では金沢医科大学と同院のみ。 顕微鏡により拡大された鮮明な衝野のなかで操作するため安全であり、皮膚切開が約2センチ と小さく術後の創部痛が軽減されるため、患者は翌日から歩くことが可能だ。佐藤院長は「旧来と比較した場合、術後1週間短縮された。将来的には術後3泊4日、さらには2泊3日ぐらいで短縮できるだろう」と話す。手術を受けた患者の口コミが広がり、最近はヘルニアに悩む若年層の来院による新患も増加している。このため、広報・広告も積極的に活用し、広報誌やパンフレットに掲載するキャッチコピーは職員から懸賞金付きで募集した。決まったのは『つらい痛みが笑顔にかわる「腰ヘルニア手術」の金沢脳神経外科病院』だ。「脳神経外科と聞くと怖いというイメージをもつ人がまだまだ多い。ヘルニアなど腰部の診療も行っているということを知っていただく必要がある」と佐藤院長は話す。 高齢化社会に対応すべく「もの忘れ」専門外来も設置し、脳疾患の専門医として痴呆の早期診断・早期治療を重視していく方針だ。

4月から院内感染対策のひとつとして、看護師のナースキャップを廃止した。 佐藤院長は「科学的根拠に基づいた院内感染対策が必要であるとの認識によるものだ」と述べる。  同院は、石川中央保健所の提案を受け、病院スタッフ6人と保健所職員5人によるチーム (ICT:Infection Control Team)を結成し、院内感染対策に向けたプロジェクトに乗り出した。 行政指導にあたる保健所と指導を受ける医療機関とがプジェクトを組むという、全国的にも珍しい試みだ。 ICTプロジェクトは、毎月2回開催され、うち1回はリンクナース(各部署の感染対策担当看護師)も参加する。プロジェクトの活動は、感染対策の基本である「手指衛生」の徹底から開始した。全職員を対象に「手洗い実態調査アンケート」や手洗い手技の実践教育を行い、手指衛生の重要性を啓蒙。手指衛生が院内感染対策の基本であることを認識させることができた(佐藤院長)。プロジェクトでは、今年度の活動日標として@感染対策マニュアルの見直しA医療消耗品の適正使用B職員研修の充実CICTによる院内ラウンドの定着−を掲げる。「第三者がどう見るかという視点、エビデンスのある医療環境が、患者さんの安心につながると考える」と佐藤院長は語った。